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首藤剛志さん著『永遠のフィレーナ』読破。「生きること」と自己の存在意義

昨年夏から今年の年明けにかけて、こんなものを読んでいました。

永遠のフィレーナ〈9〉青く果てしなく (アニメージュ文庫)

永遠のフィレーナ

「何だそれ?」という方が大半だと思います^^;
私も、この小説を執筆された作家さんのファンになったから知ることができましたが、そうでなかったら永遠に触れることのない作品だったんじゃないかと思います。


永遠のフィレーナ』を書いたのは、脚本家の首藤剛志さん。
アニメ『ポケットモンスター』(初期)や『魔法のプリンセス ミンキーモモ』、
戦国魔神ゴーショーグン』の脚本・シリーズ構成などで知られている方です。


永遠のフィレーナ』を執筆されていた1984年から1994年頃は、
戦国魔神ゴーショーグン』の後日談小説など、雑誌『アニメージュ』を媒体として様々な作品を発表しており、アニメ脚本家として活動しながらも、小説家としても活動されていた感じがあります。

(ご参考までに、感想文はこちら:「思い込み」と生き様〜『戦国魔神ゴーショーグン番外篇2 美しき黄昏のパバーヌ』を読んで - itone-note。)

 

永遠のフィレーナ』も元々は雑誌『アニメージュ』で連載されていたもので、1984年に連載を開始し、1985年に文庫版第1巻が発売されました。(第1話掲載当時の『アニメージュ』を国会図書館で読んだことがあるのですが、なんとあの『風の谷のナウシカ』のすぐ次のページに掲載されていました)

 

以前の記事(「最近の落書きまとめ(9~11月) - itone-note。でもちょこっとだけ触れていましたが、やっと感想文が形になりました。

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なぜか8巻のみプレミア価格で入手困難なため、国会図書館で丸一日かけて読み切るという暴挙に出ました

既に絶版しており、入手するとしたら中古品を探し出すしかない状態。(実際ほとんどは某通販を利用して購入しました^^;)
アニメのポケモンの『ミュウツーの逆襲』のテーマにも通じるものを感じる作品で、
大変興味深く読み進めていきました。

 *もくじ

あらすじ①:男として育てられた戦闘用奴隷・フィレーナの秘密と旅立ちまで

デビス帝国が全てを支配する世界で、
戦闘用奴隷として育てられたフィレーナが主人公。
男として育てられましたが、本当は女性です。

 

戦闘用奴隷として、帝国人を楽しませるための闘技試合(※誰か一人が生き残るまで戦い続ける。ほとんど殺人ショー)に繰り出される日々。
ある日フィレーナは、育ての親であるゼナが残したフィルムカセットから、
自分の出自にかかわる重大な秘密を知ります。

 

フィレーナは、デビス帝国に滅ぼされた海洋国家フィロセラの王女だったのです!

 

訳あってフィレーナの「妻」になった娯楽用奴隷・リラと共に、
フィレーナはフィロセラの復興のため、地方都市ドラを飛び出して旅に出ます。

 

……と、ここまでは王道ファンタジーな感じでなんだかワクワクしてきますが、
旅を続ける過程で、デビス帝国に関するとんでもない秘密が明らかになっていきます……。

 

あらすじ②(ネタばれ込):物語は人類の生き残りをかけた、壮大な戦いへ

(30年近く前の絶版している作品にネタバレも何もって感じですが……。)

フィレーナたちは失われた母国・フィロセラの復興をめざして旅を続けますが、
フィレーナの行く先々で、帝国の陰謀によりたくさんの人々が殺されていきます。
度重なる戦闘の中で、フィレーナ自身もたくさん人を殺してしまいます。
どうしてこんなにも人が死ぬのか。


旅を続ける中で、フィレーナは帝国の重大機密を知ってしまいます。 

 

フィレーナが住む星は、滅亡寸前の状態にまで荒廃していました。
海はく汚され、大地の大半は不毛の地と化し、滅びへの道を辿る一方。
増えすぎた人口を維持していくのにも、もう限界がきている状態です。 


フィレーナの住む星は、人口を減らしていく必要がありました。
各地で起きていた戦争を帝国上層部は放置していたのですが、
それは、一つには人口を減らすという目的があったからなのです……。恐ロシア

 

そして、デビス帝国にはもう一つ重要な目的がありました。
それは、「人類を存続させること」でした。

 

フィレーナの世界には、大きく分けて2つの人種がいました。
フィレーナのような、自然に生まれ育った生身の人間と、
いわゆる「帝国人」と呼ばれる人々……。

 

汚れきってしまったこの星では、もはや人類は生きてはいけない。
ならば、宇宙に進出するための(つまり、宇宙に適応できる)新しい人間を作ろう。
そうやって人為的に生み出され、進化させられた人たち……
それが「帝国人」でした。


帝国人の中でもまた更に人種選別が行われており、特に「純粋」な優れたものたちは「優秀種」と呼ばれ、特別な待遇を受けていました。

  

「優秀種」の中でも更に優れたものたちは「皇帝種」として選び抜かれ、
その皇帝種の七人は、人類の後継者選びを担わされていました。

 

皇帝種の次を担うべく、人工的に産み出された「超皇帝種」
遺伝子に人工的なことで、幼児から18歳へと急速成長させられた、ある青年。
そして、フィレーナたちのような、古来からの性質を受け継いでいる人間。
帝国人たち。


……滅びゆく世界の中で、生き残り、人類の後継者となるのは一体誰なのか?
帝国とこの星の秘密を知ったとき、フィレーナたちはどうするのか?

 
自分たちは、いったいなぜ生まれたのか。自分とは何なのか。
フィレーナたちは、それぞれの存在意義に悩みながらも、
それぞれに生きていく道を選びます。


人類の後継者になるだとか、失われた国家の復興をするだとか。
そんな大義名分は、結局のところフィレーナの生きる目的とはなり得ませんでした。
フィレーナにとっては、自分の生き方を愛し、
フィレーナとして生き抜いていくこと、それが全てとなっていくのです……。

感想:首藤作品の「生きる力」みたいなもの

首藤剛志さんが執筆された作品には、このような、他の誰かが自分の存在意義を全力で潰しにかかってきて、それに主人公が色々と思い悩みながらも、それでも「生きてやる」と全力で対抗していく展開の物語が多い気がします。

 

例えば、アニメ『戦国魔神ゴーショーグン』の後日談的作品の「時の異邦人」
主人公が死の宣告に必死に抗う物語で、非常に「生きる力」みたいなものを感じる作品でした。私にとっては、とても胸を打つものがありました。

fulafulawings.hatenablog.com

1980年代の『魔法のプリンセス ミンキーモモ』でも、最終話において、夢や希望を信じ、新たな人生を生き抜こうとするモモと、そのモモの存在意義を真っ向から否定しようとする黒雲との戦いが描かれました。

anime.dmkt-sp.jp

 

この『永遠のフィレーナ』の場合、帝国の陰謀に蹂躙されてみたり、
かと思えば人類の後継者の候補者として未来を任されてみたりするわけですが、
結局フィレーナは、失われた母国・フィロセラのためでも、
人類の後継者になるわけでもなく、
純粋にフィレーナとして生きることを選びました。 

フィレーナだけでなく、フィレーナの仲間の帝国人たちや、
皇帝種によって人為的に生み出された「超皇帝種」たちも、
それぞれに自分の生まれた意味を問いながら、でも最後は、
自分の生きる目的を見つけて、その目的に従って生きることを選びました。
まあ、それが衝突しあって、最後はあちこちで激戦となるわけですが……。

 

それでも、他人が課してきた運命だとか願いだとか、
そういうものを全部振り切って、自分の生き方を自分で決めていくフィレーナたちってすごいなあ……と思います。

 

私もいつかは、「自分は自分なんだ」と前を向いて生きることができたらなあ、
などと思ってはいるのですが、なかなかそこまで力強く生きられてない気がする昨今です。

 

現実は上手くいかないことが多いですが、それでも、理不尽な運命に負けずに戦い、生き続けたフィレーナや、首藤作品のキャラクターたちを見ていると、それが心の支えにもなるような気がしていて、やっぱり好きだなあと思ってしまいます。

 

……壮大なお話のわりには、とりとめのない感想になってしまいました。
私自身、まだ整理がちゃんとつけられてないのかもしれないです。
ここには書き切れななかった魅力もたくさん詰まっている作品ですので、
もし何かで手に取る機会がありましたら、一度読んでみたら良いのではないかな……と思います。


とりあえず、生きる気力を失くしがちな方にはオススメです(笑)
ひたすら残酷な描写(世界観)が続くので、それに耐えうる方は、ですが……。