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Dream Sketch #0

Dream Sketch 創作

お読みになる前に、まえがきを読んでいただくとありがたいです

Dream Sketch まえがき - sitonemaru’s diary(仮)

 

「Dream Sketch」

これは、

だれかのゆめの話。

夢なのに、そのだれかにとっては

明らかな真実。

現実を映し出した、鏡の世界。

☆☆☆☆☆

 

ここは、海風に守られし村ミホビレッジ。

人々はみんな明るく、仲良く暮らしている。

 

僕の、大好きな場所。

 

一人とても横暴なヤツがいて、ここは国じゃなくて村なのにここの「国王」を名乗っていて、その名の下で人々にひどいことをさんざんやっている。

そいつは僕を目の敵にしてやたらとつっかかってくる。

 

面倒に巻き込まれることも多いけれど、それでも僕はこの場所が好きだ。

 

僕が、一番「僕らしくいられる場所」だから。

 

僕は、自分がどうやって生まれてきたのか、誰が親なのかも覚えていない。

気付いた頃にはこの村にいて、この村の住人として過ごしていた。

僕はちょっと不器用なところがあるのか、まじめにやっているつもりなのに上手くいかないことがあって、村の人から冷たい目で見られることもある。

でも、ここには僕を愛してくれる人もいる。

僕も、この村のみんなが大好きだ。

 

この村は基本的には平和だ。

人々はめいめい好きなことをして日常を過ごしている。

 

ちょっと前までは、さっき言った「国王」ってやつが、おそろしいバケモノを宇宙から呼び寄せて、村にとんでもない悪さをすることもあった。

それをみんな倒してきたのが、この僕だった。

僕はなぜか、このバケモノたちに対抗できるだけの力を、生まれながらにしてもっていた。

かれこれ百ぐらいは倒しただろう。

そのうち、バケモノを送り出してくる悪い組織のもとにも行って、諸悪の根源も倒してきた。

だから今、この村は平和なのだ。

 

しかしある日、この村にとてつもなく強い力をもったバケモノが封印されているというウワサが流れた。

「国王」が送り出したバケモノの残党らしかった。

そいつは、2つの秘宝を集めることで復活してしまうらしい。

 

ある夜、村民たちが「国王」の城の廊下で話をしていた。

僕の親友の父親は、なぜかその「国王」の下で大臣を務めている。

大臣の下に、村の未来を心配したみんなが集まっていたようだった。

みんなの話によると、どうやら「国王」は既に秘宝のうちの一つを持っているらしい。そして、もう一つの秘宝を探し出そうとしているらしい。

 

僕は、急に胸騒ぎを覚えた。

 

城の一室で不思議な星型の石を見たことがあった。

石でできた箱の上の星型の穴にそれははめられていて、もう一つの丸い穴には何もはめられていなかった。

穴の数がちょうど2つだ。もしかしたら……。

僕はその石を見た部屋へといそいで向かった。

 

城のある一室。石でできた壁と床の部屋。スケッチブックが雑多に置かれた机がある以外は何もない。奥の小さな窓からは、月明かりが冷たく差し込んでいた。

部屋の真ん中に、確かにそれはあった。

石の箱。その上のくぼみに、星型の石が。

 

部屋でじっとしていたら、僕の親友たちが部屋にやってきた。

あわててどこかへ走り出す僕のうしろを追いかけてきたらしい。

「もしかして、それが秘宝?」

「見つからないようにしなくちゃね」

親友の2人は姉弟だ。

 

部屋を出ようとした矢先、待ち構えていたかのようにヤツがやってきた。

「ふふふ……よくぞ見つけてくれたな」

いつにも増して凄みのある声だった。まるで別人だ。

と思いきや、

「これをあげるから、それと交換してっ」

語尾に♪マークがつきそうな勢いの、甘えたような、小馬鹿にしたような声。……これはこれでまた別人のような声だ。

奴が……「国王」が僕に差し出そうとしているのは、僕の大好物のフルーツ。

僕は、この世界の人々から見ればほとんど幼児だった。

 

……だけど、その手にはもう乗らない。

僕は「国王」に向かってダッシュして、顔面めがけて一発蹴りを入れた。

「国王」の隣にいた家臣がびっくり仰天して声も出ない様子だった。

親友たちもなんだかものすごく驚いた顔をしていた。

 

……そこで何故か、記憶が途切れてしまっている。

たぶん、秘宝を抱えて城の中を逃げ回ったんだと思う。

だけど、気が付いたときにはまたあの部屋にいて、秘宝はもう「国王」の手に集まってしまっていた。

「これからが楽しみだ。ふふふ……」

 

「国王」の笑い声。後ろで、風に舞ってスケッチブックがパラパラとめくれる音がした。

 

その後、僕たちはどうすることもできず、凶悪な魔物は復活してしまい、村は嵐に襲われた。

 

戦えるのは僕しかいない。無謀な戦いだけど、やるしかなかった。

僕は、生まれもった特別な力で剣を生み出し、激しい雷雨が打ちつける中でバケモノと戦った。

 

バケモノは黒くて楕円形をしていて、頭とおぼしき部分には不気味に輝く赤い三角の眼がついていた。体の左右からは、目と同じ色の巨大な三本の爪をつけた腕が伸びていた。

無謀な戦い。明らかに僕は不利だった。

奴は動きを止めることなく、ひたすら爪のついた腕を僕に振りかざしてきて、こちらからダメージを与える隙など、ほとんどなかった。

手の付けようがなくなったとき、なぜかこの村にいる一人の剣士が、小さな石の欠片をもって駆けつけてきた。

彼も僕と似たような存在で、バケモノに対抗できるだけの強い力を持っている。

かつては仲間の戦士たちとともにたくさんのバケモノと戦ったらしい。

彼は言った。

 秘宝はもう、奴の復活のために使われてしまったから壊れてなくなっている。

 けれど、欠片なら残っていた。

 欠片であっても、奴を封印できるだけの力を宿している。

 この秘宝の欠片を使って奴を倒すのだ。

彼も強い力を持っているから協力してくれるとありがたかったのだけれど、どうも秘宝の力を使えるのは僕だけなのだそうだ。

 

僕の剣は、秘宝の力をうけて光輝いた。

その剣の一撃は、奴の強靭な腕を圧倒して、ようやく奴の体にダメージを与えることができた。

奴は耳をつんざくような叫び声を上げ、真っ黒な体が闇に溶けていくようにしてみるみるうちに小さくなっていった。

かと思うと、残った体が天高く飛翔していった。

僕もそれを追った。

秘宝の力で、ぼくは何もしなくても飛翔することができていた。

 

 

気が付けば宇宙空間にいた。僕らの星を飛び出してきてしまったらしい。

小さな闇の玉のようになってしまったバケモノは、小刻みに震えていた。

僕はとどめの一撃をさした。

直後に、そいつが何かを言った。

 

――お前は、この苦しみから永遠に逃れることはできないだろう――

 

奴の笑い声が聞こえた。

 

瞬間、僕の目の前の景色が、パリン、と音を立てて割れた。

ちょうど、割れたガラス窓越しに夜の星空を見ているような、そんな感覚だ。

気付けば、僕の真下の空間もヒビだらけになっていた。

 

ガッシャーーン。

 

 

すべての景色が、砕け散った。

僕は突然重力を取り戻したかのようになって、

そのまま深い闇の中を落下していった。